盲ろう者のQOL向上において、盲ろう者自身が独力で、主体的に時間管理できることはとても重要です。
しかし、視覚情報と音声情報の両方を利用できない盲ろう者の多くは、「自分で時間を管理したい」という日常生活活動の基本的なニーズに関して、事実上、現在の市場からは排除された状態にあります。
私たちは、「自分で、手軽に、正確な時間を知りたい」という盲ろう者の切実なニーズを満たす「しっかりさわれる触読式目覚まし時計」を実用化し、盲ろう者が独力で時間管理をするための手段を市場に創出することを目指して活動しています。
正確な時刻を知ることは、生活リズムの形成、家族や社会との時刻の共有をしていく上で非常に重要なことです。
またアラーム(目覚まし)機能の利用により未来の時間を管理できれば、起きたい時間まで安心して眠ったり、決めた時間まで安心して作業に集中したりすることができます。
盲ろう者が自分で手軽に時間管理をできるようになれば、より自立した生活が送りやすくなり、社会参加がしやすくなると期待されています。[*1]
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盲ろう者の日常生活における時間管理の意義(盲ろう者の自立と社会参加を推進するための機器開発・改良支援システムの構築ならびに中間支援者養成プログラム作成に関する研究)(外部リンク)
盲ろう者むけ時計開発への期待:触読式置時計を考える(盲ろう者に対する障害者施策のあり方に関する研究)(外部リンク)
盲ろう者とは、視覚と聴覚両方に障害のある人のことです。視覚情報と聴覚情報両方の活用が不可能または困難なため、コミュニケーションや情報入手、移動などに深刻な困難を抱えています。
日本国内の盲ろう者数は、約2万3千人程度と推計されています。ただし、日本の現行法においては視覚障害と聴覚障害がそれぞれ別個に規定され、盲ろう者としての統一的な規定はありません。そのため、正確な統計データや、体系的な支援制度もまだ確立していません。
もっと詳しい情報:
盲ろう者について知ってください(東京盲ろう者友の会|東京都盲ろう者支援センターホームページ)
盲ろう者のコミュニケーション方法は、視覚及び聴覚の障害の程度や受障過程、生育歴によって、受信の方法、発信の方法とも様々です。直接会話を交わす場合には、双方が共に理解できるコミュニケーション方法を用いる必要があります。
主な直接コミュニケーションの手段としては、触手話、指文字、指点字、手書き文字といった方法があります。
もっと詳しい情報:
コミュニケーション方法の詳細 (東京盲ろう者友の会|東京都盲ろう者支援センターホームページ)
現在、視覚情報にも聴覚情報にも頼らずに、正確な時刻情報を取得する手段としては、視覚障害者用の触読式腕時計、点字電子手帳やパソコン用点字ディスプレイが活用されています。しかし、中途盲ろう者をはじめとして、点字を読めない人には、ピンディスプレイなど点字による情報提示方式は利用できません。(点字識字率は視覚障害者全体の1割程度)
また、高齢者や手指の巧緻性に制限のある人には、触読式腕時計の微妙な位置情報の読み取りは非常に困難です。その上、現在の市場にある触読式腕時計には、本来触読を想定していない一般時計用のムーブメントが流用されているため、触ることで簡単に針が動いて時刻表示が狂ってしまうという問題があります。
これらの手段を利用できない盲ろう者が時刻を知るためには、直接コミュニケーションのとれる人に頼るしかありません。
さらに、視覚情報にも聴覚情報にも頼らずに利用できる振動方式のアラーム(目覚まし)機能を備えたものは、現在の市場には存在しません。

現在開発中の時計は、アナログ式時計と同じように、時分を示す部位の回転によって時刻を表示します。
一般的なアナログ式時計と大きく違うのは、壊れやすい部品である片持ち式の針がないことです。回転する盤面の一部が隆起した形状になっていて、それが針の役割をします。
本体の直径は100mm。単四乾電池2本で駆動します。
私たちは、「時間管理」という行為において最も深刻な困難を抱えている盲ろう者のニーズを起点にして、一般商品としても訴求力のあるアラームクロックの実現を目指して開発を進めています。
最近のユニバーサルデザインは、既存の商品や技術を出発点にして改善することで、ユーザー層の拡大を目指すアプローチ方法が主流です。
しかし、この方法では既に利用できている人にとっての使いやすさや魅力の向上には繋がりますが、 ユーザー層の拡大には限界があります。
つまり、今、利用できないでいる人が利用できる商品やサービスには結びきにくい方法です。
既存のアナログ式時計は、目で見て時刻を読むことを前提にしているため、繊細な機構や部品で構成されています。
そのため、ガラス蓋を外して針にさわれるようにする、という改良だけでは、触ることで針がずれてしまう、という問題が解決できません。
私たちは、既存の時計の繊細な機構と部品構成を前提にした改良では、盲ろう者が十分に使える、手で触って読むための時計にはならない、と考えました。
そこで、私たちがとったのは、もう1つのユニバーサルデザインのアプローチ方法です。
それは、対象とする行為において、最も深刻な困難を抱えている人のニーズを起点にするアプローチ方法です。
この時計開発では、「時間管理」という行為において、最も深刻な困難を抱えている盲ろう者のニーズを起点にしています。
最初から手で触って時刻を読むことを前提にして、しっかり触ることができる時計にするために、壊れやすい片持ち式の針を使わない時刻の表示方法を検討しました。
そのため時計の機構や構成を、根本から考え直すことになりました。
ここまでの開発で実現した時計の機構や構成は、目で見て時刻を読むための時計にも活用できます。
そのため、盲ろう者や盲の人が触読式時計として利用できるだけでなく、家族や周囲の人と同じ情報を共有することができます。
また、カラーリングの工夫によって弱視者が利用しやすい時計に展開することができます。
さらに、普段はメガネやコンタクトレンズを利用している人が、就寝や起床時などに裸眼で利用できる時計にも展開できます。
スタイリングやカラーリングによっては、視覚的にも面白い、個性的な時計に展開できますし、時計の新しいジャンルの創出につながると考えています。
視覚要素についてはまだまだこれからですが、最終的には、一般市場で訴求できるようなアラームクロックにしたいと私たちは考えています。
中野 真一(有限会社ピージェーアイ)
松平 健(有限会社ピージェーアイ)
大藤 恭一(株式会社大藤事務所)
吉村 政昭(株式会社周プランズワーク)
大河内 直之(東京大学先端科学技術研究センター)
河辺 豊子(社会福祉法人日本点字図書館)
小平 純子(特定非営利活動法人東京盲ろう者友の会/東京都盲ろう者支援センター)
塩谷 治(社会福祉法人全国盲ろう者協会)
繁成 剛(東洋大学ライフデザイン学部人間環境デザイン学科)
杉山 雅章(社会福祉法人日本点字図書館)
土井 幸輝(国立特別支援教育総合研究所)
橋間 信市(社会福祉法人全国盲ろう者協会)
畠山 卓朗(早稲田大学人間科学学術院)
福島 智(東京大学先端科学技術研究センター)
藤鹿 一之(特定非営利活動法人東京盲ろう者友の会)
星 祐子(筑波大学附属視覚特別支援学校/全国盲ろう教育研究会)
安田 早苗(社会福祉法人日本点字図書館)
和田 勉(社会福祉法人日本点字図書館)
触読式目覚まし時計プロジェクト事務局:
有限会社ピージェーアイ
メール clock@pji.co.jp
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